概要【E:被害数と被害額】

東北全体、福島県以外

《東北全体》
地震・津波被害での死亡は、ウシ 662 頭、ブタ 5,850 頭、ニワトリ 454.9 万羽。津波による被害を除くと、畜舎・ケージ倒壊、飼料タンク・貯蔵庫、堆肥施設、食肉処理施設、家畜市場等の損壊は 89 ヵ所に及んだ。〈農林水産省生産局食肉鶏卵課の報告による、佐藤衆介2013〉

《宮城県》
家畜の被害は、畜舎の倒壊による圧死、停電による凍死、飼料工場被災による配合飼料の入手困難等による餓死、また、津波の被害では、畜舎の流失、水死等様々な被害が報告された。
 地震による被害額は、乳用牛 16 頭(7,000 千円)、肉用牛 12 頭(5,944 千円)、豚 350 頭(4,900 千円)、採卵鶏747,430 羽(201,806 千円)、肉用鶏 606,297 羽(171,439 千円)であった。

津波による被害は、乳用牛 196 頭(71,640 千円)、肉用牛 352 頭(152,300 千円)、豚 2,537 頭(69,574 千円)、採卵鶏 37,800 羽(9,506 千円)、肉用鶏 101,000 羽(25,250円)、みつばち 405 群(6,160 千円)であった。

総被害家畜は、約 1,496 千頭羽数で被害額は約 7 億円に達し、また、停電や燃料不足、生乳の運送停止、乳業工場の被災から、生乳約 8,200t(830,000 千円 )、種卵 36t(58,500 千円 ) も廃棄された。〈大久昇悦(宮城県畜産試験場)「東日本大震災に伴う宮城県内の畜産の被害状況と対策」2013〉

福島県全体

福島県は震災前、農業・畜産業が盛んな県だった。全国3位の農業就業人口、全国11位の出荷額を誇り(平成22年)、さらに農業に限らず、漁業、工業も同じく盛んだった。

震災前後の福島県の畜産飼養戸数・頭数は以下のとおりである。一部の畜産主要地域を除く多くの県に同じく、震災前から家畜の飼養戸数・頭数は減少していた。
しかしながら、赤字で示した震災直後の平成24年の減少幅はそれまでとは比較にならない大きさであることが分かる。

双葉郡未来会議season7 スライドより

震災前後(平成23年2月・平成24年2月)の家畜飼養戸数・頭羽数の減少幅を具体的に示したのが、以下の表である。全ての畜種で戸数が2割前後減少し、頭羽数も鶏を最大に約1割~4割程度の減少が見られた。
ちなみに震災前、3つの制限区域合わせて、飼養頭羽数で福島県全体の牛(乳用牛と肉用牛)22.2%、豚 29.4%、鶏 41.3%を占めていたため、概ねその飼養分が減少したとみてよい。

出典:a)『東日本大震災での福島県畜産業の被害状況及び復興対策』https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/42747.pdf

避難区域:区域別(震災前)

震災前の区域別家畜飼養戸数・頭羽数は以下のとおりである。

出典:a)

農林水産省によれば,旧警戒区域内には

牛農家280 戸 3,385 頭,

豚農家 8 戸3 万 1,486 頭,

鶏農家 17 戸, 63 万 3 千羽

20㎞圏内~警戒区域~

以下は警戒区域内の牛の数の変遷をまとめた表である。
※単位がないものは頭数を示し、保護・野生化の項を除き全て累計である。情報源によって合計頭数等にゆらぎがある。震災後に生まれた牛もおり、合計頭数は震災前頭数より全般的に多くなっている。

注:「保護」は農家や保護団体による。

鶏 44.1万羽いたがほとんどが餓死、残り(367羽)は全て安楽死された。
豚 3万頭いたがほとんどが畜舎内で餓死。畜舎内で生き延びた個体、一部放れ畜となった個体は安楽死された。放れ畜の一部はイノシシと交雑して野生化したが、環境省の方針によりそれらもすべて捕獲・安楽死された。

2014 年 1 月末までに牛の殺処分頭数は 1,692 頭。

20キロ圏内 町村ごとの牛の頭数について、2011年3月当時と2018年3月時点の比較

警戒区域内の安楽死措置等の進捗状況(2012年3月31日時点)

出典:『第3章 原子力災害への対応』p37 https://www.pref.fukushima.lg.jp/download/1/03_dai3shou.pdf

警戒区域内の安楽死等措置数(2017 年6 月 1日現在)

注 1:区域内の飼養戸数・頭羽数は平成 22 年 10 月 1 日現在
注 2:豚の安楽死措置・一時埋却措置頭数にはイノブタ 71 頭を含む
注 3:鶏の戸数・羽数は 1,000 羽以上,進捗状況には 1,000 羽未満および農場独 自実施分を含む
2013 年 1 月,牛については 2014 年 1 月を もって,すべての安楽死処分および死体の埋却処 分は終了
出典:『福島原発事故が警戒区域の飼養家畜にもたらしたもの 1.警戒区域で飼養されていた家畜への対応』産業動物臨床医学雑誌8-2四校.indd (jst.go.jp)

市町村別頭数【牛】 (太字:公式なデータ 細字:農家などから聞き取り調査によるデータ)

南相馬市小高区

「被災牛と歩んだ700日」より

20-30キロ圏内~計画的避難区域・緊急時避難準備区域

計画的避難区域・緊急時避難準備区域の肉牛については、区域外への移動が積極的に行われた。移動に際し全頭スクリーニング検査が行われ、放射線量が基準値(10万cpm)以下だった家畜のみ移動可能とされた。
そのスクリーニング結果(2011年4月23日~同7月1日)は以下のとおりである。


なお、国が示す放射線量の基準(10万cpm)を越えた事例はなく、その85 %は1,000 cpm 未満であった。

出典:『第3章 原子力災害への対応』p37 https://www.pref.fukushima.lg.jp/download/1/03_dai3shou.pdf

計画的避難区域の牛の残頭数状況は、
6月 9日時点 2494 / 9300頭 (残頭数/避難対象頭数)農水省より
11月10日時点  126 / 9300頭 農水省より
であった。


警戒区域内家畜の移動特例措置

警戒区域内の家畜については、原則として警戒区域外に持ち出すことがな
いが、以下の条件に則り、豚と馬の生体移動が行われました。
・ 公益性があること
・ 研究用以外の家畜生産及び食用に利用しないこと
・ 公的機関が責任を持って家畜を監視すること
等の条件の下で、特例的に区域外への移動が認められた。
a 歴史的伝統行事「相馬野馬追い」の保存のため、祭事に用いられる南相馬
市等の馬31頭を区域外に持ち出した。
b 学術研究目的で南相馬市の豚26頭を東京大学の研究牧場へ移動した。

営農再開率

震災後(2011年末?)福島県内の飼養頭数規模別/制限区域別の被災状況と、その後の再開戸数が以下の表に示されている。再開戸数の総数は被災農家数83戸に対して13戸(15.7%)とほとんどの農家では再開の見込みが立っていない状況が伺える。
右部に、制限区域別に経営再開の可能性がどのような状況下にあるかが記載されている。

http://www.milk.fukushima.jp/wp/wp-content/uploads/2016/02/kibobetsu.pdf

H27.9(2015年9月)時点での福島の酪農家の再開状況。この時点でも、過半数の農家が再開に踏み切れていないことが分かる。

http://www.milk.fukushima.jp/wp/wp-content/uploads/2016/02/kuikibetsu.pdf

出典:福島県酪農業協同組合より

原発被災12市町村の営農再開状況を示した図(畜産だけでなく稲作等農業を含む)
調査は12市町村の農業者約1万戸のうち、訪問を希望した世帯・法人を対象に実施。

https://www.fsrt.jp/wp-content/uploads/2020/01/0181a077eab1ca9dc4d5741b94f446c4.pdfより作製

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