被災農家の声【E:調査目的・意義等】

【目的】

近年日本では災害が増えてきているが、家畜関係は、災害時の法律がないことから、「自助」・「共助」・「公助」の内の「自助」で対応するしかない。個別単発的な災害事例の特性から、体系的なマニュアルが構築されづらく、対策を取っている農家は少ないままで、被害は増え続けている。家畜は財産であると同時に生き物であるため、飼い主の酪農家・畜産農家も、家畜を置いて避難できず極限状態の中で世話をし続けなければならない事例が後を絶たない。

東日本大震災の福島県避難区域の事例は、≪大地震≫、≪津波≫、≪停電≫、≪断水≫、≪道路寸断≫、≪原発事故≫、≪立ち入り制限≫、≪長期避難≫、等といった複合的で広域的な未曽有の大災害だったため、ここから学べることは少なくない。最も困難な制約があったこの地域での経験を体系的にまとめて発信することで、今後一層増えると言われる災害に備える一歩になり得る。

震災後10年の節目を逃すと、他でも災害やコロナで大変なため、福島から重要なことを発信しても気づかれにくくなる恐れがある。記録してきたものを公開して得られる効果がある、最後のチャンスかもしれない。

震災後長期化する避難生活や年齢等のため、この地域の酪農家・畜産農家の方々がお一人お一人と亡くなっていっており、近年増加傾向にある。既に記憶が薄れていたり、心に傷を負っているため、当時のことを語ることができない方々も多いが、震災直後は語りたくなかったことも、今は、遺さなくてはという気持ちが出てきた農家の方が増えている。彼らのそのままの思い、記憶を記録に遺し、更に、彼らの苦渋、犠牲を無駄にしないよう、未来へきちんと生かせる形で発信するため、全国からの学生たちとともにインタビューを実施した。

次の災害に備えるために、何か少しでも役に立てば幸いです。

(役立つ情報を随時更新していく予定です。)

【意義】

[調査自体]

•10年を経て、気持ちを整理する機会となる

•前へ歩む一歩になる可能性が生まれる

•なかなか聞くことのできない他の農家の経験を知ることができる

・子孫・後世へ伝えられる

・ 地域・他の地域へ伝えられる

・他の人の被害を減らすための、主体的なアクションとなる

[調査から得る防災・減災のヒント]

•災害時に農家が無理せず家畜を救護できる可能性が上がる

•経済的損失を抑えられる(※福島の原発事故の場合は、半径20キロ圏内は一律に経済的価値0円になったため、原発事故にはあてはまらない可能性が高いが)

・人の救護や避難に全力を傾けられる

•他の農家仲間も助けられる可能性が生まれる

•避難所を作ったり、避難させられる方法がわかる

•家畜を逃がしたり、放浪さなくて済む

•渇死や餓死、事故死、殺処分等の現場に立ち会う農家や役場職員、家畜保健所、獣医の負担が減る

・家畜に関する防災意識を高めるきっかけになり、今後ますます増えるだろう災害に備えられる

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松木洋一『東京電力福島第一原発事故で被曝している牛の生存と飼育者,支援市民の4年間の軌跡』(2015)
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030892075.pdf
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